今回も本件ディールの定点観測です。
毎回申し上げていますが、本件の最大の特徴は、通常は高度に秘匿されるM&A/TOBの進捗が、リアルタイムで報道ベースに露出している点にあります。
その背景には、対象企業である**Warner Bros. Discovery(WBD)がCNNを擁し、他方で好敵手のParamount GlobalがCBS**を子会社として持つという、メディア企業同士の政治的・世論形成機能を内包した構造があります。
Paramount側は、トランプ政権に比較的好意的とされるCBSを背景に、CNNの報道姿勢を問題視するニュアンスを漂わせつつ、ホワイトハウスへのロビー活動を行っているとの観測が出ています。一方でCNN側もそれを牽制する報道を頻繁に展開している、という構図に見えます。(CBS側の記事もウォッチしていますが、CNN側に比較すると事実報道が主で、比較的内容がquietですね。)
今回の記事の焦点は、「ホワイトハウスがNetflix案に対して競争法(反トラスト法)の観点から検討を開始しているか」という点でした。
しかし冷静に整理すると、
- Netflix案:映画・ドラマ制作およびデジタル配信事業の取得(報道部門は含まれないカーブアウト型)
- Paramount案:映画・ドラマ制作・配信に加え、報道部門も含めた包括取得
という構造であり、報道機能まで統合するParamount案の方が、競争政策上の論点は広い可能性もあります。
そのような中で、トランプ氏が「本件には関与しない」と距離を取り始めた点は、政治的リスクを勘案したシグナルとも読め、非常に興味深い動きです。
① 競争法視点:Netflix案 vs Paramount案
| 観点 | Netflix案(WBD一部取得) | Paramount案(WBD包括取得) |
|---|---|---|
| 取得範囲 | 映画・ドラマ制作+配信 | 制作+配信+報道 |
| 水平統合 | ストリーミング市場での寡占度上昇 | ストリーミング+放送ネットワーク |
| 垂直統合 | コンテンツ制作~配信の一体化 | 同左+報道機能統合 |
| 市場定義の論点 | SVOD市場シェア | 放送・ニュース市場も対象 |
| 政治的リスク | 比較的限定的 | 報道統合による政治的影響大 |
| 競争法審査難易度 | 中程度 | 高い可能性 |
② 過去の競争法主要案件と成否
| 案件 | 主体 | 論点 | 結果 |
|---|---|---|---|
| AT&T × Time Warner | AT&T × Time Warner | 垂直統合 | 承認(司法省提訴も敗訴) |
| Disney × Fox | The Walt Disney Company × 21st Century Fox | 水平統合 | 条件付き承認 |
| Microsoft × Activision | Microsoft × Activision Blizzard | デジタル市場支配 | 条件修正後承認 |
| 日本製鐵 × US Steel | 日本製鉄 × U.S. Steel | 国家安全保障+競争 | 審査継続中 |
本件は、単純な市場シェアの議論に加え、政治・メディア影響力という非価格的競争要素が絡む点で、従来案件よりも複雑です。
所感
今回のNetflix×WBDディールは、
- 競争法
- 政治
- メディア統制
- 株主価値最大化
- 敵対的TOB戦略
が同時進行で絡み合う、極めて稀有なケースです。
通常、M&Aは「水面下」で進行します。
しかし本件は、世論・政治・報道がディールの一部になっている。
M&Aを志す方にとっては、
「契約書の外側にある力学」を学ぶ格好の教材と言えるでしょう。
引き続き、定点観測していきます。
CNN:
Trump met with David Ellison days before saying he’s ‘not involved’ in Paramount’s Netflix battle
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