ワーナー・ブラザース・ディスカバリーを巡るTOBをどう見るか

— リアルタイムで観察できる、稀有なM&A教材 —

過去の職歴もあり、私は以前からM&AやTOB(株式公開買付)に強い関心を持ってきました。
昨年末から表面化している NetflixによるWarner Bros. Discovery(以下WBD)の買収提案、そしてそれに対抗する Paramount GlobalによるカウンターTOBは、個人的にも極めて興味深く、継続的にウォッチしています。

通常、この規模のディールは当事者以外がリアルタイムで状況を追えることはほとんどありません。
しかし今回は、開示される情報には当然制限があるものの、案件の外観や論点を第三者として追体験できる、極めてレアなケースになっています。
M&A実務やコーポレートガバナンスを考える上で、まさに千載一遇の学習機会だと感じています。


今回の案件が「ウォッチしやすい」理由

今回のディールがここまで注目を集め、かつ観察しやすい背景には、いくつかの特徴的な条件があります。

  • 案件規模が巨額
    市場が自然と注目せざるを得ない、数百億ドル規模のディールであること。
  • TOBとM&Aが同時進行
    敵対的要素を含むTOBと、友好的M&Aの検討が並走しており、構造として非常にドラマ性が高い。
  • メディア業界 × 著名企業同士
    業界自体が情報発信力を持ち、当事者もいずれも世界的に知られた企業である。
  • WBDがCNNの親会社である点
    WBDは CNN を傘下に持ち、機微情報に接しやすい一方、
    「報道の公平性」を強く意識せざるを得ない立場にあります。
  • Paramountの経営姿勢への批判が表に出やすい構図
    WBD側から見ると、Paramountは戦略的にも価値観的にも相容れにくい存在であり、
    買収後の経営体制や株主構成(中東系資本の影響を含む)について、問題提起を行いやすい環境にあります。

直近の動きと取締役会の責任

報道を見る限り、Paramount側はTOBへの賛同者を増やすため、**プロキシーファイト(株主委任状争奪戦)**に踏み込んだ様子です。
その過程で、WBD取締役会の対応を「不誠実だ」と批判している論調も見受けられます。

しかし、ここで重要なのは、WBD取締役会が感情論や私利私欲で動いているかどうかではありません。
彼らに課されているのは、あくまで Fiduciary Duty(善管注意義務)、すなわち
**「WBDの株主価値を中長期で最大化するために、最善の選択肢を検討しているか」**という一点です。

少なくとも現時点の公開情報を見る限り、
WBD取締役会がその義務を逸脱していると断定できる材料は乏しく、
「感情的にNetflixを選好している」といった説明も行っていません。


ParamountとNetflix、それぞれのモチベーションとシナジー

過去の投稿でも触れましたが、シナジーの観点では、私の見立てではNetflix案に軍配が上がります。

イメージで言えば、

  • Paramount × WBD
    大きなラジオと小さなラジオを組み合わせるようなもの。
    音量(規模)は増すものの、本質的には同質の延長線上にあり、
    共通部品の整理によるコスト削減が主な効果になりそうです。
  • Netflix × WBD
    ラジオとカセットテープを組み合わせるような異種結合。
    既存機能の補完に加え、新しい体験価値や将来のプロダクト(例:ウォークマン的存在)を
    生み出す余地が想像できます。

この前提に立つと、
Paramountとしては「WBD+Netflix」という強力なプレイヤーが誕生する前に、
多少高値を払ってでもWBDを取り込み、競争上の脅威を無害化したい」

というインセンティブを持っていても不思議ではありません。


本日の考察は以上です。

#M&A #TOB #WarnerBrosDiscovery #Netflix #Paramount #FiduciaryDuty #プロキシーファイト #メディア業界


参考:CNN関連記事

(※いずれもCNN掲載記事)

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