Netflix×WBD 定点ウオッチ(続報②)

本日も定点ウオッチの続報です。
繰り返しになりますが、通常は強固な秘匿下で進行する M&A/TOB 案件において、本件は極めてレアな条件が重なり、まるでレースの実況中継を見ているかのように外形が可視化されている事例です。

これから M&A/TOB を検討・実行される方にとっては、実務・政治・世論が交錯するリアルな教材として、非常に示唆に富むケースだと思います。
関係者のポリティクスが垣間見える場面も多く、「人のふり見て我がふり直せ」という視点で、引き続き定点ウオッチを続けたいと思います。

私は個人的な関心もあり本件を継続して追っていますが、初めてご覧になる方に向けて、まずは簡単に全体像を整理します。


これまで、映画・テレビ・ニュースを擁するメディア大手の Paramount Global は、同業の Warner Bros. Discovery(以下 WBD) に対し、**全社買収を前提とした求愛(M&A提案)**を繰り返してきました。
しかし WBD の取締役会はこれを拒否し続ける一方で、現在は Netflix との間で、報道事業を除く映画・スタジオ・ストリーミング事業のカーブアウトM&Aについて、独占交渉に入っていると報じられています。

報道ベースでは、Netflix 側の想定買収価格は 1株あたり約27〜28ドル水準
これに対し Paramount は、

  • 1株30ドルという上乗せ価格
  • 四半期あたり総額約6.5億ドル(年間約26億ドル)の配当支払い
    (30ドルに対して年率換算で約8〜9%相当)
  • さらに、Netflix が交渉を断念した場合に発生する ブレークアップ・フィー(解約金)約28億ドルの実質肩代わり

といった、極めて攻撃的な TOB 条件を提示したと報じられています。

前回の定点ウオッチでも触れましたが、これは Paramount 側によるロビー活動、あるいは世論形成を強く意識した再提案と見るのが自然でしょう。
もっとも、「一度気持ちが離れた相手に、条件だけを積み上げても状況が好転するとは限らない」というのも、M&A の現場でよく見る光景です。


私自身の関心は一貫してシンプルで、
どちらの M&A/TOB が成功しても構わないが、投下資本を超える事業シナジーが本当に創出されるのか、という一点に尽きます。

今回参考にした CNN の記事では、Paramount 提案に対する Netflix 側の強い牽制が紹介されています。
Fox Business Network のインタビューで、Netflix のグローバル渉外責任者である Clete Willems 氏は、次のように発言しています。

“They have identified $6 billion in synergies … which is code for $6 billion in job cuts.”

ここで使われている “code for” とは、
「表向きは“シナジー”という言葉で説明しているが、実態は約60億ドル規模の人員削減を意味する」
という、極めて強い皮肉と問題提起です。

この発言が示しているのは、Paramount 案の競争力が、

  • 成長シナジー
    ではなく、
  • 防衛的・リストラ前提のコストシナジー

に大きく依存している可能性です。

そう考えると、外野の立場から見た場合、
WBD にとっては Netflix とのディールの方が、社員・顧客・クリエイターを含めた事業価値の持続的拡大に資する可能性が高い
という、これまでの私の見立ては、現時点でも大きくは揺らいでいません。

毎週発売される週刊コミックの次号を待つような感覚で、
次にどのようなストーリーが展開されるのか、引き続き注視していきたいと思います。


参考記事

#M&A #TOB #Netflix #WarnerBrosDiscovery #Paramount #メディア業界 #カーブアウト #シナジー分析

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