会社を設立したあとの最初の関門は、「電子申請」と「電子納付」です。
起業時にはこれらの手続を可能な限りスムーズに進めるため、e-Tax、eLTAX、e-Gov、GビズIDといった主要な電子申請ツールの事前登録をすべて完了させておくのが理想です。
私自身も、法人設立後にこれらの申請環境を一通り整備しました。
基本的にはMac環境で完結させたかったのですが、2025年11月時点ではeLTAXだけがMacではセットアップできず、最終的にWindows PCで申請処理を完了しています。
その過程で得られた知見をもとに、本記事では起業初期に必要となる電子申請4兄弟(e-Tax/eLTAX/e-Gov/GビズID)と、
納付方法(自動引落・Pay-easy・ネットバンキング)や源泉所得税の納期特例を含め、
2025年11月時点での最新対応状況までを整理して共有します。
🏢 第1章 電子申請4兄弟:役割と使い分け
| ツール | 主な用途 | 管轄 | 主な対象手続 | 備考 |
|---|
| e-Tax | 国税(法人税・消費税・源泉所得税) | 国税庁 | 税務申告・納付 | freee等と連携可。マイナンバーカード認証対応。 |
| eLTAX | 地方税(法人住民税・事業税) | 地方税共同機構 | 申告・納付 | Windows専用。PCdesk利用。 |
| e-Gov | 社会保険・雇用保険関連 | 総務省 | 社会保険適用届・資格取得届など | GビズIDでログイン。 |
| GビズID | 共通認証ID | 経産省 | 補助金申請、電子申請ポータル | マイナンバー+スマホで即日発行可能。 |
💡 第2章 実務フローで見る「いつ」「誰が」「何を」するか
| 時期 | 主体 | 手続 | 使用ツール | 備考 |
|---|
| 設立直後 | 法人 | 税務届出書提出 | e-Tax/eLTAX | 利用者ID・暗証番号設定。 |
| 設立直後 | 法人 | 社会保険加入 | e-Gov+GビズID | 年金事務所との連携が必要。 |
| 月次 | 法人 | 給与支払・源泉税処理 | e-Tax(freee連携可) | 納期特例を活用すると半年に1回でOK。 |
| 半年ごと | 法人 | 源泉所得税納付 | e-Tax/Pay-easy | 特例適用後:7月・1月に納付。 |
| 決算時 | 法人 | 法人税・地方税申告 | e-Tax/eLTAX | 決算データと連動。 |
| 通年 | 法人・個人 | 補助金・助成金申請 | GビズID | 電子証明書不要。 |
💰 第3章 電子納付の手段と法人口座の対応状況
| 区分 | 主な納付方法 | ツール | 対応状況 | 備考 |
|---|
| 国税 | ダイレクト納付/ネットバンキング/Pay-easy | e-Tax | ◎ | 一度口座登録で自動引落可能。 |
| 地方税 | ダイレクト納付/Pay-easy | eLTAX | △〜◎ | 自治体差あり。 |
| 社会保険 | 自動口座振替 | e-Gov | ◎ | 申請時に「口座振替依頼書」提出。 |
| 年金・健康保険(個人) | 自動口座振替/クレカ/Pay-easy | e-Gov/年金ネット | ◎ | 個人口座と分かれる場合あり。 |
| 補助金 | 銀行振込(受取側) | GビズID/Jグランツ | ◎ | 口座登録必須。 |
🏦 銀行対応メモ(2025年11月時点)
- メガバンク(三菱UFJ・みずほ・三井住友):国税の自動引落には対応。ただし社会保険料の自動振替は年金事務所経由の別手続きが必要。
- 地銀・信金:国税対応済みが増加中だが、社会保険料の自動引落は地域差大。
- GMOあおぞらネット銀行:国税(e-Tax)と社会保険料(e-Gov)の双方で正式に自動引落に対応。2025年11月時点で、この両方に完全対応しているネット銀行はGMOあおぞら銀行のみ。
- 住信SBIネット銀行・楽天銀行:国税はPay-easy納付可だが、自動引落は準備段階。
🧾 第4章 源泉所得税の「納期の特例」で事務負担を半減
| 項目 | 内容 |
|---|
| 概要 | 本来は支払翌月10日までに納付が必要な源泉所得税を、半年分まとめて年2回(7月・翌年1月)に納付できる制度。 |
| 対象 | 常時10人未満の従業員を雇う法人(ひとり会社も対象)。 |
| 提出書類 | 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」— 税務署へ提出(紙またはe-Tax)。 |
| 承認時期 | 提出後約1〜2ヶ月で承認通知書が届く。 |
| 納付スケジュール | 上期(1〜6月分)→7月10日まで/下期(7〜12月分)→翌年1月20日まで。 |
| 納付方法 | e-Taxのダイレクト納付またはPay-easyが便利。 |
| メリット | 納付回数を年2回に減らせる。仕訳・管理が楽。 |
| 注意点 | 承認前は通常通り毎月納付。承認書の控えを必ず保存。 |
🔄 第5章 ひとり会社に最適な電子申請・納付フロー
| フェーズ | やること | 主体 | 使用ツール | 納付方法 |
|---|
| 設立直後 | GビズID取得/e-Tax・eLTAX初期設定 | 法人 | GビズID/e-Tax/eLTAX | – |
| 同時期 | 納期特例申請 | 法人 | e-Tax | – |
| 月次 | 会計処理・給与支払 | 法人 | freee会計 | – |
| 半年ごと | 源泉所得税納付 | 法人 | e-Tax/Pay-easy | ダイレクト納付推奨 |
| 決算期 | 法人税・地方税申告 | 法人 | e-Tax/eLTAX | ダイレクト納付 |
| 通年 | 社会保険料納付 | 法人 | e-Gov/口座振替 | 自動引落 |
| 随時 | 補助金・助成金申請 | 法人 | GビズID | 銀行振込受取 |
🧩 まとめ
- 電子申請4兄弟(e-Tax/eLTAX/e-Gov/GビズID)はそれぞれ役割が異なる。
- e-Tax・eLTAX=税務申告と納付、e-Gov=社会保険、GビズID=共通認証基盤。
- 源泉税の納期特例を活用すれば、半年ごと年2回の納付で事務負担を大幅軽減。
- Pay-easyやダイレクト納付の設定により、完全リモートで納税可能。
- 2025年11月時点で、国税と社会保険料の両方を自動引落に対応しているのはGMOあおぞら銀行のみ。
- Mac環境での完全対応は依然として限定的(各人環境依存?)であり、特にeLTAXはWindowsセットアップ環境利用が現実的。
関連記事「MacでeLTAXの申請を試みた結果|最終的にWindowsで完了した実体験」
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