― 起業準備を時系列で振り返ってみる ―
一人合同会社を設立すること自体は電子申請でできるので、手続き面では比較的簡単です。
しかし、やり慣れない作業を確認しながら進めるため、それなりに思考と検討の時間、そして学習が必要になります。
単に「書類を出すだけ」ならば知識だけで済むのですが、実際の起業ではそれ以上に、クリエイティビティーと考察力が鍵になります。
今回はこの視点を時系列で振り返ってみたいと思います。
1. 構想期:起業のコンセプトと人生設計
まず初めに当然ながら必要になるのが、事業のコンセプト・計画・経済性の検討です。
私の場合、きっかけは「定年」を目前にした働き方の再設計でした。
再雇用パッケージを取るか、転職をするか、あるいは独立して事業を立ち上げるか──。
年金受給が始まる65歳までの数年間をどう過ごすか、
そしてその後の人生をどう設計するかを、実に2年近く考え続けてきました。
2. 設計期:制度・税・社会保障の整理
起業を現実のものとするためには、
「やりたいこと」だけでなく、税金・社会保険・年金・扶養などの制度的側面を整理しておく必要があります。
私は起業の2か月ほど前に、これらを一気にまとめ上げました。
- 所得と税負担の見通し
- 厚生年金と国民年金の切り替え
- 健康保険・妻の扶養条件
- 個人資金と会社資金の分離
- 創業初期のキャッシュフロー
こうした点を一つひとつ、**AIとの“壁打ち”**を通じて検討しました。
AIツールを利用すると、制度や税法の概要を即座に整理できるため、
思考の枠を広げながら短期間で結論を出すことができます。
3. 実務準備期:書類とブランドの同時進行
登記申請書類の作成、税務署・都税事務所・市役所への届出書、
そして法人口座開設に必要な書類の下書き──。
これらはすべて相互に関連しているため、並行して進める必要があります。
また、書類作成と同時に、
- 社名の検討
- 会社ロゴの作成
- 会社ホームページの立ち上げ
- 事業計画の骨子づくり
といったブランド・設計側のタスクも重なります。
この段階は「行ったり来たり」が当たり前です。
一つを決めると別の項目が変わり、また最初に戻って見直す。
ただ、この過程こそが、会社の“輪郭”を自分の手で形づくっていく貴重な時間でもあります。
4. 実行期:AIとともに進める起業プロセス
ここからが、私にとって特に印象深いフェーズです。
定款を作成する前に、まずは会社のコーポレートイメージやビジョンをAIと話し合う時間を持ちました。
お酒を飲みながら、少し肩の力を抜いて「自分は何をしたいのか」「どんな会社にしたいのか」を語り、
AIに意見を求めたり、整理してもらったりする。そんな“雑談に近い壁打ち”からすべてが始まりました。
一旦、年金を受給するまでの期間に維持したい収入レンジを想定し、
それに対して自分が実施する事業モデルの売上・コスト構造・キャッシュフローをAIとともに何度もシミュレーションしました。
私は幸い、事業計画や事業価値評価(NPV、IRRなど)のノウハウを持っていたため、
AIとのディスカッションは極めて有益でした。
AIが提案するパターンを元に「これは現実的か」「どのリスクが支配的か」と検討を重ねるうちに、
自分の事業の輪郭が徐々に明確になっていく感覚がありました。
また、AIがこれらのやりとりを踏まえて、
- 社名候補の推奨
- 既存商号とのコンフリクトチェック
- コーポレートイメージとの整合性確認
なども提示してくれました。
私の場合は、すでに付けたい社名を決めていたため、
AIには「この社名が持つ印象が、事業コンセプトやロゴイメージと合っているか」をチェックしてもらいました。
そして意外に大きかったのが、会社ロゴの生成です。
このロゴはAIに作ってもらったもので、
そこから派生してホームページのコーポレートカラーやPowerPointの標準フォーマットなど、
全てのビジュアルデザインに一貫性をもたせる基点になりました。
こうして振り返ると、AIの起業への貢献は想像以上に大きく、
まさに**“デジタル・パートナーと共に始めた会社づくり”**だったと感じています。
5. 振り返ってみて
登記手続きそのものは数日で完了しますが、
そこに至るまでの思考と設計には、時間と向き合う覚悟が必要です。
しかし同時に、このプロセスこそが「起業」の真の醍醐味でもあります。
手続きをAIが支援してくれる時代になった今、
起業はより身近に、そしてより個人の創造力に依存するものになったと感じています。
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