日本電産・永守会長とM&A

— 成長を駆動した強烈なPMI経営 —

永守重信氏が率いてきた日本電産(Nidec)のM&A戦略についてです。
最近では、代表取締役退任を巡る報道もあり、「永守経営の功と罪」といった文脈で語られることも少なくありません。

私はエンジニア出身で、モーター制御系の技術開発を専門としてきました。その関係で、日本電産、あるいは同社に買収されたコパル社の関係者と協業する機会もあり、本件は個人的にも非常に感慨深いテーマです。
(真偽は定かではありませんが、買収後は“使い切った短い鉛筆を見せないと新しい鉛筆が支給されない”といった逸話を耳にしたこともあります。)

永守会長ご本人と直接お会いしたことはありませんが、今から何十年も前、確か長野県の諏訪駅だったと思います。
特急列車を待つ、わずか3分ほどの間に、膝の上にラップトップPC(江戸時代の拷問装置を想起させます)を広げ、険しい表情で寸暇を惜しんで仕事をされていた姿が、今でも強く印象に残っています。

日本において、M&Aを成長戦略の中核に据え、長期にわたり実行し続けてきた経営者として、永守会長は間違いなく先駆者的存在でしょう。
その特徴は、

  • 経営がやや困難な企業を
  • 比較的低いプレミアムで取得し
  • 日本電産流の徹底した経営管理・オペレーションを
  • PMIとして強力にインストールする

というスタイルに集約されます。

買収企業側が強いリーダーシップを発揮し、被買収企業を「同化」させることでシナジーを生み出す──
この一貫したM&A・PMIの思想こそが、日本電産を世界有数のモーターメーカーへ押し上げた原動力であり、同時に近年議論される「永守経営の限界」とも強い関連を感じます。

日本電産(Nidec)|主なM&Aの歩み(概要年表)

※金額・詳細条件は割愛し、「戦略的意味合い」を重視した簡易年表です。

買収・再編対象概要・戦略的意図
1980–90年代国内中小モーターメーカー精密小型モーター分野での技術・人材の取り込み
2000年代前半海外HDD用モーターメーカーHDD向けスピンドルモーターで世界シェア拡大
2007年日本サーボFA・産業用モーター領域の強化
2010年エマソン・エレクトリック(モーター事業)家電・産業用モーターのグローバル展開
2012年アヴァロン(車載モーター)車載分野への本格進出
2017年イタリア・ACT(自動車部品)車載駆動・EV関連技術の獲得
2018年三菱重工 機械システム事業の一部大型モーター・産業機械分野拡張
2020年PSAグループ 駆動モーター事業EV用トラクションモーター強化
2021年三菱重工 空調用圧縮機事業空調・冷却分野のグローバル競争力強化
2023年以降EV・産業向け周辺技術EV集中投資の見直しと選択と集中

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