買ってよかったM&Aと呼ばれるためのKPIの設定の考え方(1/3)

SySIの8軸レーダーチャートを2枚並べた図。左右で形がはっきり異なる。

さて、前回投稿までで、当社の提案するSySIという手法に基づいて、M&Aのシナジーを8軸の評価軸に分解する事を紹介しました。

そのうちの3軸は従来のM&Aの教科書に紹介されている、売上、コスト、財務シナジー、残り5軸が人材・組織、知財・技術、規制、市場・競争、IT・デジタルで、これらはM&Aの先行事例の分析を基にM&Aの実施者達が実際に設定する指標であることをご説明しました。

そして、前回の再掲図になりますが、下図をご覧ください。
この様な分析手法に基づき、M&Aケースを俯瞰すると、公表の情報から前者3軸のKPIしか主に見えないものは、所謂Financial Buy Out型つまり、会社を資産価値として取得して、少々お化粧をしてそのまま、高値で企業または事業転売をして利鞘を求めるタイプのM&Aであるとか、

同様に後者5軸のKPI側に主眼を置く様なM&Aは、事業に特徴を持ったKPIにフォーカスしてM&Aの買収を実施して、それによるリターンを求めるStrategic Buy Out型であるという様なことが見て取れます。

同じ8軸のレーダーを二つ並べた図。事業活用目的の買収では5軸側が張り出し、投資・転売目的の買収では3軸側で形が収まる。

ここで、繰り返しになりますが、PLやBSの直接評価とつながる3軸と、5軸のKPIとは経済数値としては関連しあっているので、たとえ5軸側のKPIに軸足を置いていても3軸側の数値が低すぎると、結局M&Aでの経済効果が発露されていない事になります。
ただ単に5軸側が突出していればそれでOKでないところがM&Aの難しいところです。

(余談になりますが、
外部公表されるM&Aの情報は、特に買収後となると、買収側企業内で被買収企業を内包することになったファミリー事業の情報とならざるを得ません。
その為買収を実施した企業が大きくなればなるほど、関心のM&Aの案件の背後にこの案件を支えるファミリー事業の資本が控えている事になります。
その為、”3軸の直接のパフォーマンスが悪くとも、そこはこれらファミリー事業の資本が支えるので、それで構わない、M&Aの結果の良し悪しは、想定していた事業のKPIの実現をまず優先する”、という視点もあります。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)マトリックス的に見て、稼いだ事業で得た資金を次代の為の事業に投入するのは当然です。問題はその投資投入で対象のM&A案件が想定の成長をし、そのファミリー事業からの投入を含めてM&Aコストを回収するか否かになります。)

当社が主眼を置くM&Aケースは二者が融合して生み出すシナジーに主眼を置いているものなので、データのほとんどはSBO型のものです。強いてFBO型の一例をお示ししますと、下記のフォートレスの様な形になります。

フォートレス×そごう・西武のSySI 8軸レーダーチャート。売上・コスト・財務の3軸が立ち、人材・組織、知財・技術、規制、市場・競争、IT・デジタルの5軸は中心近くに沈んでいる。

さて、前置きが長くなりましたが、以降基本SBO型のケースについて議論していく事として、では、一体どのようなKPIの設定の仕方をすると、概評としても評価されるM&Aになるのでしょうか。

この議論の為にSySIでこれまで集めた200件強の(データケースは現在も追加中です)ケースデータで、一般的に成功と呼ばれるもの、失敗と呼ばれているものの典型的な2つのケースのSySI分析結果をお示しします。

Positive Case例

ハイアール×GEアプライアンスのSySI 8軸レーダーチャート。人材・組織に向かって大きく伸び、売上と知財・技術が中ほど、財務・規制・IT・デジタルは中心寄り。

Negative Case例

オラクル×サーナーのSySI 8軸レーダーチャート。知財・技術と規制がやや張り出すものの全体に小さくまとまり、財務がいちばん中心に近い。

これらのレーダーチャートを見て、みなさまどのような見立てをなさいますでしょうか…

次回に続く


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連載「ところで、M&Aのシナジーって?」

第10回以降も、順次公開していきます。

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