ParamountによるWarner Bros. Discovery買収を巡る米州司法長官の競争法介入(2)

CNNに掲載されました、表記件の続報です。

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Paramount and Warner Bros. expect a delay in closing the deal

先日の12州の州司法長官による反トラスト法上の問題提起について、どうやら正式にTRO、すなわちTemporary Restraining Order(一時的差止命令)の申立てがなされたようで、ParamountによるWarner Bros. Discovery(WBD)に対するTOBのスケジュールにも遅れが生じる見通しとなっています。

今回の訴訟は、California州司法長官Rob Bonta氏が主導し、California、Arizona、Colorado、Connecticut、Massachusetts、Minnesota、Nevada、New Jersey、New Mexico、New York、Oregon、Washingtonの12州が、ParamountによるWBD買収の阻止を求めて提起したものです。州側は、本件がHollywoodにおける競争を阻害し、映画・テレビ市場における消費者の選択肢を減らすと主張しています。(apnews.com)

この訴訟については、先日少々触れたとおり、Paramount社への中東からの投資、その投資とWBD傘下のメディアであるCNN、そしてCNNと反目するTrump大統領との関係性についての危惧も背景にあるようです。

CNNの記事では、次のように記載されています。

Some of the 12 state attorneys general, all of whom are Democrats, have questioned whether the swift DOJ approval was the result of President Donald Trump’s cozy relationship with the family that owns Paramount.

つまり、12州の州司法長官はいずれも民主党系であり、その一部は、DOJによる迅速な承認が、Trump大統領とParamountを所有する一族との近い関係によるものではないかと疑問視している、ということです。

本件は、単なる映画会社・ストリーミング会社の統合問題にとどまらず、CNNやCBSといった報道メディアを含む情報流通インフラの再編という意味合いも持ちます。現在の米国政治環境を踏まえると、報道機関の独立性、メディア所有者の政治的立場、そして政権との距離感が、通常のM&A以上に強く意識されるのは自然な流れだと思います。

これで、ParamountによるWBDに対するTOBの阻害要因としては、少なくとも以下のような論点が重なってきたことになります。

まず、今回の米12州司法長官による反トラスト法上の訴訟およびTRO申立てです。Reutersによれば、California州と11州は、ParamountによるWBDの1100億ドル規模の買収が、映画・テレビ市場で価格引き上げ力を持つ巨大メディア企業を生み出すとして提訴し、同時に、訴訟継続中の取引実行を止めるためのpreliminary injunctionも求めています。(reuters.com)

次に、UKおよびEUでの競争法・メディア規制上の審査です。AP通信も、Paramount側は複数国での承認取得を進めている一方、EUおよび英国での審査はなお進行中であると報じています。(apnews.com)

さらに、Paramount+等のサブスクライバーによる民事訴訟や、Writers Guild of Americaを含むHollywood関係者からの反対も報じられています。統合によって、制作本数、雇用、クリエイターの交渉力、番組の多様性、消費者価格などに悪影響が出るのではないかという懸念です。(apnews.com)

これまでの投稿でも記載しましたが、Paramountにとって厄介なのは、TOBの遅延が経済的コストにも直結する点です。

Reutersによれば、Paramount側は、取引が10月までに完了しない場合、WBD株主に対して1株あたり0.25ドル、総額で四半期あたり約6.5億ドルのticking feeを支払う条件を提示しています。単純に日割り換算すると、1日あたり約700万ドル規模の追加負担に相当します。(reuters.com)

このため、TROやpreliminary injunctionによってクロージングが数週間でも遅れる場合、Paramount社にとってはかなり厄介な事態になります。

現在の米国が関係する中東での混乱が、今回の提訴や世論形成に影響を与えることも十分予想されます。Trump政権、CNN、Paramountの所有構造、中東資本、報道メディアの独立性といった論点が絡むことで、本件は通常のメディアM&Aよりも政治的な色彩を強めているように見えます。

もしや、ParamountによるWBDに対するTOBは不成立となり、NetflixによるWBDの必要事業のカーブアウト構想にまた先祖返りしたりして……とも感じます。

引き続き、経過を見守りたいと思います。

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