ParamountによるWarner Bros. Discovery買収を巡る米州司法長官の競争法介入(5)

定点観測を続けております、表記案件の続報(ショート版)です。前回の投稿の続きになります。

競争法介入の件は漸く着地しました。12州の司法長官団とParamountが和解に至り、これでTOBを止めうる法的な障害はなくなって、10月初旬にはクロージングに進みそうとのことです。なお、連邦レベルの承認は今年6月に司法省が無条件で調査を終えており、最後まで残っていたのがこの州の訴訟でした。

州司法長官側の論点は、報道機関が一つの資本に統合されてしまうことによる報道の独立性の阻害などの視点で、最終的には、CNNとCBSニュースの双方を対象とする報道編集の独立委員会を設けるなどの条件付きで決着しています。

皆様もご存知の通り、トランプ政権がホワイトハウスでのCNNその他の報道機関の取材を制限するなど、また同時にParamountのCBSが政権寄りと見られるといった、政治と報道のこの様な悶着があるなかで、競争法が国民の便益を最優先にその機能を果たそうとしていることは高く評価されるのではと思った次第です。

今回の情報の詳細整理は下記にまとめておきます。

私はそもそもM&Aとそのシナジー効果について業界動向に関心があり、本件を継続ウォッチしているのですが、重ねて、本件はディールのスキームがTOBということで、さらには当事者がマスメディア業界ということもあって、M&Aの途中経過が外に出やすく、ありがたい限りで、好例のケースでした。

Paramountが公表している今回の買収の目的の一つは、Paramount+とHBO Maxを統合して、単独ではNetflixやDisneyに追いつけない配信事業に規模をもたらすことだとされています。ただ、そもそもParamountの映画事業でシナジーを生む活動もできるはずのところになぜWBDなのだろうかとか、今回は競争法などの規制法視点での損失=ディスシナジーを、TOBをかける前のDDの分析時にどのくらい盛り込んだのかなどが、すでに気になる次第です。当事者しか本当のことは分かりませんが。

報道の独立性は、売却による分離ではなく委員会という形で担保される建て付けになりました。おそらく、珍しいことに、今後も買収の後の問題、課題などが本ケースでは巷に漏れ聞こえてくることになると思います。

継続してウォッチしていきたいと思います。

【今回の報道サマリー】

2026年9月21日、カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官がロサンゼルスで会見を開き、Paramount Skydance と12州の司法長官団が、Warner Bros. Discovery(WBD)買収を巡る反トラスト訴訟で和解したと発表しました。7月の提訴、8月下旬の「誠実さを欠く」としての協議打ち切りを経ての着地です。

州側が当初求めていたCNN・CBSニュースの分離売却やケーブル事業の切り出しといった構造的な是正は、和解には入りませんでした。代わりに並んだのは、おおむね5年間の行動上の約束です。

  • 劇場公開:1〜2年目は年30本(うちワイド公開20本)、3〜5年目は年32本(同21本)。独立系作品を年4本以上。未達の場合はMiramaxの売却と、1本につき3,000万ドルの組合基金への拠出。
  • 米国内製作:5年で15億ドル以上の追加投資。税額控除の水準に応じて国内製作比率の目標が上がる建て付け。
  • 労働者支援:4,750万ドルの基金(離職者の訓練・再就職)。独立系映画基金として年500万ドル。
  • 配信・ケーブル:ベーシックケーブル局の個別交渉義務、Pluto TVの無料提供を現行品質で維持。
  • 報道の独立:クロージング後180日以内に「News Editorial Independence Board(報道編集独立委員会)」を設置。報道経験10年以上のジャーナリスト5名で構成し、同一政党の所属者は2名まで。報道の偏向や、合意した公正性基準の不履行を巡る申立てを裁定します。対象はCNNとCBSニュースの双方です。
  • 監視:遵守の検証のために独立モニターを置く。

全米脚本家組合(WGA)は別途和解し、CBSニュースのライターについて5年間のレイオフ禁止と、健康基金への1,750万ドルの拠出を得ています。一方、コネチカット州のトン司法長官は「CNNとCBSニュースの完全な分離売却を求めたが、得られなかった」として不満を表明しました。

連邦レベルの審査は、これとは別にすでに終わっています。司法省反トラスト局は2026年6月12日に無条件で調査を終了し、FCC・欧州委員会・英国当局を含む68法域の承認も取得済み、WBDの株主総会承認は4月に済んでいます。今回の州との和解で、取引を止めうる障害は事実上なくなりました。

ParamountのDavid Ellison CEOは各州司法長官の誠実な協議に謝意を示し、WBDのDavid Zaslav CEOは社内向けに「遅くとも10月初旬にはクロージングする見込み」と伝えたと報じられています。10月1日から四半期あたり約6億5,000万ドルのティッキング・フィーが発生する、その直前での決着でした。

なお、こうした案件を8軸に分解してシナジーの成り立ちを見る試みについては、SySI™のページでご紹介しています。

関連記事(CNN)
“State attorneys general agree to settle Paramount merger lawsuit”
https://edition.cnn.com/2026/09/21/media/paramount-wbd-settlement-cnn-ellison-bonta-lawsuit

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