ところで、M&Aのシナジーって一体どんなもの?

M&Aのシナジーを表すイメージ ― 雲の上に立つ人々と「Synergy」の文字

200件を集めて、再認識したこと

SySI™の分析のため、現時点で200件強の世界のM&A案件について情報を集め、分析を続けています。

そのなかで再認識したことがあります。シナジーが発現したとされる成功事例でも、あるいは失敗事例でも、その「秘策」にあたる部分がKPIとして語られることは、驚くほど稀だということです。

外部に向けて語られるのは、たとえば「市場シェアを◯%まで高め、業界◯位を◯年以内に実現する」といった水準の話です。年次報告資料や有価証券報告書に記載されるのは、投資家を含む一般の外部の方が概評として理解できるレベルまで。それ以上には、まず踏み込まれません。

無理もないことだと思います。開示は、株主に伝わる言葉で書かれなければならないから。そして、秘策は隠しておきたいからです。

では、その手前には何があるのか

当社の分析では、この公開情報に加えて、可能な限り市場で実際に何が起きていたのかという、もう少し生々しい事実と照らし合わせるようにしています。

たとえば「市場シェアが増えた」という結果があったとして、その理由はどこにあったのか。A社が従来得意としていたP事業と、それとは異質なQ事業とのプロダクトミックスによって、新しい事業が生まれていたのではないか——そうした裏側の情報を突き合わせ、1+1>2 が成立した痕跡を辿って、データベースの知見として蓄積するよう努めています。

一例を挙げます

公開情報にもある話として、アイリスオーヤマ社の例をご紹介します。

私の見るところ、同社は投資対効果に日常的に厳しく、M&Aにおいても事業救済といった視点で触手を伸ばすことはありません。自社であればその事業を有効に活用できる、つまり自社であればシナジーを出せる、という確信を持ったうえで実施されています。

使い捨てカイロ ― 生産はできるが、販売が弱い事業

同社は2006年3月、新日鐵グループのニッテツ・ファイン・プロダクツ社から、使い捨てカイロ事業の営業権を譲り受けました。岩手県釜石の工場を生産拠点として引き継ぎ、従業員も全員が移っています。

ここで「なぜ製鉄グループがカイロを作っていたのか」と思われたなら、そのとおりです。使い捨てカイロの発熱は、鉄粉が酸化するときの熱です。 鉄を扱う会社の中に、この事業があったこと自体には理由があります。

そして買った側には、売り手にはなかったものがありました。ドラッグストアやホームセンターという、自社が最も強い販売チャネルです。

生産はできるが、販売が弱い。 そこに自社の強い販売力を掛け合わせた——シナジーの構造としては、これ以上ないほど明快です。同じ工場、同じ従業員、同じ製品。変わったのは持ち主だけですが、それによって事業の姿は変わりました。

しかも、話はそれで終わりません。翌2007年10月、同社は同じニッテツ・ファイン・プロダクツ社から、脱酸素剤事業(商品名「サンソカット」)の営業権も譲り受けています。釜石工場の従業員56名と生産設備を、まるごと承継する形でした。

脱酸素剤は、包装容器内を無酸素にして、食品の酸化やカビ、変色を防ぐものです。食品にとどまらず、医薬品や化粧品、衣類にも使われます。同社の日用品・ヘルスケア用品の長期保存や鮮度保持と、そのまま接続します。

事業同士の足し算が、掛け算になっていく。一度の買収で終わらないところに、この会社の考え方が表れていると思います。

LED照明 ― お金で時間を買った

同社はもともと電機メーカーではありません。それが現在、LED電球市場では首位にあります(BCN調べ/全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データ)。

発端は2011年でした。同年3月の東日本大震災のあと、国内の電力事情は大きく悪化します。計画停電が実施され、節電が社会全体の課題となり、消費電力の少ない照明への需要が、それまでとは比べものにならない勢いで立ち上がりました。

同社が動いたのは、その7か月後です。2011年10月、佐賀県鳥栖市にあった電機メーカーの工場跡地を取得し、翌2012年1月には、そこでLED照明と家電の国内生産を開始しました。

工場をゼロから建てていたら、この需要には間に合いませんでした。 電力も、用水も、建屋も、すでに工場として動いていた場所を引き継いだからこそ、数か月で生産に入れた。お金で時間を買ったわけです。

そして製造した先には、やはりホームセンターとドラッグストアという、自社の強いチャネルがありました。製造と販売のシナジーを最大限に発揮して、世の中の需要にタイムリーに応えた。 M&Aのお手本と言ってよい事例だと思います。

同社のLED照明は2012年に省エネ大賞を受賞し、以降これまでに9度の受賞を重ねています。さらに2016年には、半導体大手のロームから、同社が「選択と集中」の中で切り出したLED照明器具事業を譲り受けました。ローム側の売上規模で約33億円、子会社アグレッドと合わせて従業員88名、1,300を超える製品と顧客を、そのまま引き継ぐ形でした。半導体メーカーにとっては中核ではなくなった事業が、LED照明を伸ばそうとしていた側にとっては、製品ラインアップと販売先が一度に手に入る話だった、ということです。

こうした痕跡を、集めています

いずれも、M&A後の公開情報をただ眺めているだけではなかなか見えない部分です。

当社ではこうした「巧みなシナジーの設計」に着目し、皆様の将来のM&Aのケースに応用できないか、日夜M&Aケースの情報収集に取り組んでおります。

ご関心があれば、実際にご覧いただけます。 御社の業種をお知らせいただければ、その業界の代表的なSySI分析を、1週間ご覧いただける専用ページをお送りします。費用はかかりません。まずは、どんなものが出てくるのかを見ていただくのが早いと思います。

そのうえで「自社の案件だとどうなるのか」という段階に進まれた方には、案件単位のシナジー分析もお受けしています。相手候補が複数ある場合は、比較してご覧いただけます。

まずは30分ほど、状況をお聞かせください。まだ検討の入り口でも構いません。


創夢パートナーズは、M&Aプロセス全体においてシナジーの設計・評価を専門とし、独自フレーム SySI™(Synergy Suitability Index™)により、シナジー仮説を8軸で構造化・定量評価します。

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