ParamountによるWarner Bros. Discovery買収を巡る米州司法長官の競争法介入(4)

定点観測を続けております、表記案件の続報(ショート版)です。前回の投稿の続きになります。

いつものようにCNNの報道によりますと、8月24日(月)に予定されていたParamountとカリフォルニア州司法長官との和解協議が、司法長官側の判断で中止となりました。理由は「リーク」です。

Rob Bonta司法長官は「Paramountは和解協議の内容とされるものをリークしただけでなく、その内容を歪めて伝えており、誠実さを欠いている(a lack of good faith)」と述べ、「Paramountがゲームをやめて誠実に向き合うようになれば、私のオフィスはいつでも再び会う用意がある」と表明しました。

念頭にあるのは、その前日にWall Street Journalが報じた記事のようです。同紙は、州側がParamountに対して(1) ケーブルチャンネル事業の売却と、(2) Warner Bros.の映画スタジオ事業を統合せず切り離したまま維持することを求める方針だ、と伝えました。Paramount側はリークを否定し、引き続き誠実に協議を続ける用意があるとしています。どちらの言い分が正しいのかは外からは分かりませんが、交渉のテーブルそのものが一度ひっくり返ったことは事実です。

過去の投稿でも何度か触れておりますが、Paramountには時間の制約があります。2026年9月30日までにクロージングできない場合、10月1日以降は1日あたり概ね700万ドル(1株あたり0.00277778ドル、四半期では1株25セント・約6.5億ドル)が、いわゆるティッキング・フィーとして、被買収側であるWBDの株主全体への対価に上乗せされていきます。前回ご紹介したとおり、本案の審理は2027年3月に予定されており、クロージングを少なくとも2027年6月上旬まで行わないという合意だけで、この上乗せは累計約19.3億ドル(約2,900億円)規模に達する見込みです。

Paramountとしては、ここからさらに遅れればさらに高い買い物になる立場に置かれているわけで、一刻も早くこの競争法案件を成功裡に着地させたいはずです。

急ぎたい側と、急ぐ必要のない側。この非対称を分かったうえで政府側は強気に振る舞っている、という全体像も見てとれますね。

競争法上の政府側のコンサーンは、大きく二つと理解しています。一つは、CBS NewsとCNNという二つの報道機関が一本の資本の下に統合されることで、メディアの情報のコントロールができてしまうこと。もう一つは、映像コンテンツの提供に競争が働かなくなり、需要者に不利益がもたらされること。Bonta司法長官は後者を「価格の上昇、品質の低下、そしてコンテンツの減少」という言い方で表現しています。

だとすれば着地の形は「全面禁止」ではなく、事業分割によって影響力をある程度軽減できるなら許可する、という条件付きの承認になる可能性がある――というのが個人的な見立てです。WSJが伝えた州側の要求も、まさにその形をしています。

ここで少し面白いのは、切り出される事業の輪郭です。もともとWBDは、ケーブル網(Discovery Global)を分離したうえで、スタジオとHBO Max側をNetflixに売却する枠組みで合意していました(2025年12月)。そこにParamountが割って入って現在の姿になっています。仮に州側の要求どおりケーブル事業が切り出され、スタジオが分離されたまま残るとすると、その輪郭はもともとNetflixが欲しかった形にかなり近い。切り出した事業を、結局は出戻りでNetflixが買う――なんてこともあるんでしょうか。あくまで個人的な想像ですが。

継続してウオッチを続けたいと思います。

なお、こうした案件を8軸に分解してシナジーの成り立ちを見る試みについては、SySI™のページでご紹介しています。

関連記事(CNN)
“California AG calls off Paramount settlement talks, accuses company of ‘playing games’”
https://edition.cnn.com/2026/08/24/business/california-cancels-meeting-paramount-warner-merger-intl

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